ヴァイオリンは、弦と弓毛が触れてはじめて音が出ます。
右手のテクニックの習得は、指導の上でも演奏者としても大きなテーマとなります。
ある高名な先生が、「右手の脱力が、将来を決めるといっても過言ではない。」と仰っていました。
より大きな音を出そうとすると、体全体に力が入ってしまい、弓圧を強く弦をこすりますが、それでは音が潰れるばかりで、遠くに音が飛びません。
ヴァイオリンは、弦の振動が駒を伝い、表板から裏板へと共鳴し、響きます。
弓圧を強くすると弦の振動がつぶれ、耳元では大きな音が鳴っているようですが、振動が板に伝わらないため、遠くに音が飛ばないのです。
誤解を防ぐために記しますが、まったく弓圧はかけない、ということでもありません。
腕の重さを利用し、右手人差し指にその時その時で必要な圧力をかけます。
また、サウンディングポイントをコントロールして、音量と音色をつくっていきます。(弓毛と弦が触れる部分をサウンディングポイントと言います。強い音を出す時、またハイポジションの時は駒の近くを、柔らかい音を出す時は指板寄りに弓を弾きます。)
曲で要求されている音、自分が出したい理想の音を本能的に弾けるようにするためにも、右手の基礎を積み上げていくのです。
そして、基礎を積み上げた後は、技術の維持をしていかなければなりません。
これより、我が師が、まとめてくださった毎日の練習法をご紹介します。
毎日の練習の始めにおこなう右手の訓練です。
この順番で行なってください。
<指弓>
④ 指弓反復運動
<右手の脱力、人差し指と親指の連携>
<元弓での小指と親指のバランス>
<弓のバランス>
<リコシェ>
これらは、プロになる、ならないは別として、基本的な技術を習得するのに、とても素晴らしいものです。
指導時期は、ト長調の音階を学習し、弓の基本的な持ち方が習得できてきたら、先弓トレモロから始めます。
指弓が習得できたら、次に指弓反復運動、そして元弓デタシェ、あとは記載順に進めます。
もちろん、生徒はすぐには出来ませんが、長い時間をかけて根気強く指導します。
この下準備が、後々の進度に響きます。
すべて習得できた後も日々のウォーミングアップに行ないます。
特に指弓反復運動は、出来るようになると色々なことが解決するとともに、技術の維持に役立ちます。